アイドリングストップ機構2016年09月08日

散歩途中の交差点などでは、停止中のクルマがスタートするとき「カシャ!」というかん高いエンジンの再始動音が聞こえます。最近は燃費向上のため、このような「アイドリングストップの機能」を備えたクルマがだいぶ増えてきたようです。

アイドリングストップ機構については、これまで私は単純に「アイドル燃費節約のため停止中はアイドリングをストップさせる機能であり、ドライバーがイグニッションスイッチで操作するのと基本的に同じであるが、エンジン停止や再始動が自動的になされるようにしたシステム」と認識していました。
 
コンセプト
                   ※ この図はこちらからの引用です。

あるとき、ふとした興味から「アイドリングストップ機構」について詳しく調べたところ、私のこれまでの認識のような単純なものではないことが分かってきました。今回のブログでは「アイドリングストップ機構」を話題にしたいと思います。

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アイドリングストップ機構が付いていないクルマに対して、付いているクルマでは以下のような特徴があるようです。

 ① 頻繁にエンジンの再始動がなされることになるため、スターターやバッテリーなどが
   強化されている。
 ② エンジン停止直後、まだ回転が完全に止まらないうちに再始動が可能となる機構が
   備えられている。
 ③ 通常のエンジン始動では始動直後には少しだけ吹け上がるようになっているが、
   アイドリングストップ機構による再始動時の場合には吹け上がらないようになっている。
 ④ 通常のエンジン始動よりも短い時間(一瞬)で再始動できるようになっている。
 ⑤ 再始動の直後でもスムーズに発進できるようになっている。


なお、アイドリングストップの仕組みによって上記①~⑤の特徴のいずれが該当するのかは異なってきます。また、ハイブリッド車における複雑な再始動のメカニズムについてはここでは対象外にしています。

次に、上記①~⑤の特徴について詳しく説明していきたいと思います。

①については、アイドリングストップ機構が付いていないクルマに対し、再始動の頻度が格段に増えますので、それに耐えられるような性能や耐久性の向上が図られています。そのため、コスト増加というデメリットが生じることになります。とくにバッテリーについては、数年に一度交換するのが普通ですので、向上した燃費以上にバッテリーの交換費用がかかるとしたら、ユーザーにとってメリットがあるのかどうか考えてしまいますね。

②については、頻繁に生じるわけではありませんが、通常のスターター機構だとエンジンが完全に停止しない状態でスターターを回そうとすると、ピニオンギアが弾かれてしまって噛み合わないため、エンジンの完全停止を待って再始動することになります。そうすると再始動に要する時間が長くなってしまいますので、この対策として常時噛み合い方式のスターター機構が考案されているようです。
 
常時噛み合いのピニオンギア
                  ※ この図はこちらからの引用です。

③については、アイドリングストップ中でも駆動系(動力伝達機構)の状態は走行モード(Dレンジ)になっており、不用意にエンジンが吹け上がると急発進してしまいますので、再始動時にアイドル回転以上には吹け上がらないようになっています。また、ドライバーがブレーキを踏んだ状態でないとアイドリングストップ機構が作動しないようになっているようです。

④については、停止から発進に移行する場合にドライバーに違和感を与えないよう、再始動に要する時間が極力短くなるよう工夫されています。ドライバーが違和感を感じることなく発進するためには、再始動に要する時間を0.4秒以下にする必要があると考えられているようです。この対策として、エンジンを停止させたときのピストン位置を制御し、再始動時にはシリンダー内へ燃料を噴射して燃焼の力によって起動するという高度な技術を取り入れられたクルマもあるようです。
 
高度な再起動方式
                    ※ この図はこちらからの引用です。

⑤については、オートマチック車の場合、駆動系を走行レンジの状態に維持し、次の発進をスムーズにするためクラッチなどを作動させるための油圧を保持しておく必要があります。このため、停止状態が長く続いても、走行レンジの状態に維持できるよう工夫がなされているようです。

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以上、アイドリングストップ機構をもつクルマの特徴について説明してきましたが、蛇足ながら現時点の技術的課題についても紹介したいと思います。

アイドリングストップの状態から再始動するには、アイドリング状態よりも多めに燃料を消費するのだそうです。そのため、アイドリングストップにより燃料消費を減少させるには、ある程度以上長く停止状態が続くことが必要になります。「アイドリングストップによる効果が得られるのは停止時間が5秒以上続く場合」と考えられているのだそうです。
 
再始動時の燃料消費イメージ
                   ※ この図はこちらからの引用です。

しかしながら、停止状態がどのくらい続くのかシステムが予測するのは非常に困難であるため、効果があるときのみアイドリングストップ機構を働かせるといったシステムはまだ実現できていないようです。なので、特殊なケースに対して上記②のような対策が必要になってしまうんですね。

停止時間に関すること以外に、次のような課題もあるようです。
現在のアイドリングストップ機構では、作動しない条件がいろいろ設定されていますが、そのほとんどは
 ① 安全上の不都合が生じないようにするため
 ② 車両の状態や周辺環境状態がアイドリングストップ機構を作動させるのに適切ではないため
 ③ ドライバーにとって不便が生じないようにするため
といった理由による条件ですが、右折待機時などアイドリングストップして欲しくないときであっても作動してしまうことがあります。このようなドライバーの意図に沿った作動をどこまで実現できるかについても今後の課題となっているようです。

現在のアイドリングストップ機能を備えたクルマでは、一時的に機能をオフにするスイッチが用意されているので、これをうまく活用するのが賢い使い方なのかも知れませんね。

最後に、最近ではオートバイ(とくに大型の自動二輪車)にもアイドリングストップ機構を備えられてきているみたいです。オートバイにも装備するなんて徹底してますね。
 
二輪車への適用例
                   ※ この図はこちらからの引用です。