歩行中に感じる風2014年10月11日

今の季節だと、歩行中に“そよ風程度の風”があたると気持ちよく歩くことができます。

でも、散歩していてちょうど良い風が吹いていると思っていたのに、歩く方向が変わった途端に風が止んでしまったと感じることがあります。周囲には風を遮るような遮蔽物はないし、立ち止まって風の有無を確認すると、自然風は以前と同じように吹いているんです。

よく考えてみると当たり前の話なのですが、そのように感じるのは「歩行速度は自然風の速度に対して無視しうるほど小さい」と思い込んでいるところに原因があるようです。実は、上述の“そよ風程度の風”は速度が歩行速度に近いので、自然風を相殺するような向きに歩くと風を感じられなくなることがあるんです。

模式図を使って、そのメカニズムを説明したいと思います。
歩行時の風

逆風すなわち“向かい風”の場合(図中の左側)には、歩行中に受ける風の強さは自然風の風速Wと歩行速度Vを合計したものになります。一方、順風すなわち“追い風”の場合(図中の右側)には、歩行中に受ける風の強さは自然風の風速Wと歩行速度Vの差になり、両者が同程度の大きさだと歩行中に受ける風の強さは無風に近い状態になってしまうんです。

実際の数値を使って考えてみましょう。私の場合、歩行速度は約5km/h(詳しくはこちら)ですので、これを秒速に換算すると1.4m/sになります。自然風の風速については“そよ風程度の風”というのを経験に基づいて推定し、ここでは3.0m/sと仮定します。

逆風の状態で歩いているときには[1.4+3.0]=4.4m/sの風を正面から受けることになります。この値は心地良い風よりもやや強めの風ということになります。

一方、順風の状態で歩いているときには[1.4-3.0]=-1.6m/sの風、すなわち後から1.6m/sの風を受けることなります。この値だと歩行速度と同じ程度の風速であり、風が背中に当たるということもあって、風があたっているという感覚が得られにくくなるのだと考えられます。


ついでながら、自然風の向きに対して直交する方向に歩行する場合についても、次の図で説明したいと思います。
横からの風

歩行中に受ける風の強さは“自然風の風速と歩行速度と逆向きの風速との合成ベクトル”となり、斜め前方からの風を受けることになります。受ける風の強さは、それぞれの風速の二乗の和の平方根になります。


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「散歩時の歩行速度は自然風の風速に比べれば無視しうるほど小さい」と思い込んでいたために、つまらない勘違いをしていましたが、こうやって改めて考えてみることにより、歩行時に受ける風の強さには歩行速度がそれなりに影響するということが認識できました。